「ラミュ短編集」と複雑な心境
先ほど「ラミュ短編集」の在庫を確認しに行きました。
フルネームで「シャルル・フェルディナン・ラミュ」。「スイスの夏目漱石」と言ってもいい知名度を誇るらしいです(ラミュ短編集あとがきより)。
生まれは1878年で漱石より11年遅く生まれ、紙幣の肖像として使われていることから、その点だけ見れば確かに夏目漱石に似ているとは言えそうです。
というよりもむしろスイスで漱石を「日本のラミュ」とも呼んでいそうな感じではありますが(^_^;)、それほどまでに互換性がある(?)のかはわかりませんが、とにかくスイス国内ではとても有名な作家のようです。
正直、私はこの本と出会うまでラミュのことは全く知りませんでした。
当店がどこでこの本を仕入れたのかと申しますと、正直記憶にございません(^_^;)
出張買取先で買取りした記憶がないため、恐らく市で買った山の中に紛れていたのだと思います。
荷をほどいて仕分けていると「ん?なんか見たことない短編があるな」となって商品化する棚に仕分けられたか、弟が同じように仕分けたかどちらかですが、これすら記憶にありません。
普段から妻に「これはこの前こうしてくれって言ったじゃねーかよ」と怒られてばかりいる身ですので、記憶にないのは日常茶飯事として半ば諦めかけていますが、この本を「日本の古本屋」に出品したのが私ということは覚えています。
というのも出品した際にペラペラとページをめくっていると「少年と少女の恋」という短編に目が留まり、あまりの面白さに出品を一時中断して最初から一気に読んでしまったという経緯があり(^_^;)、さすがにそれで覚えていないということはあり得ませんので、出品したことは覚えていました。
ですが、面白かったから価格は高めに設定して…とはならないのが古本屋です。
もちろん価格に個人の主観が若干含まれるのは仕方ないことなのですが、それはあくまでも相場との兼ね合いで許される範囲内のことす。
とはいえ主観のみに頼らざるを得ない値付けももちろんあるのですが、今回はそのケースに当てはまらないため適切な値段で出品させていただきました。
「ラミュ短編集」の世界はほとんどが山と川と山羊が出てくる世界で、こう書くとハイジのような壮大でゆったりとした時間が流れる自然を思い浮かべるかもしれませんが、ラミュの描くそれらは過酷の一言で(もちろんハイジ的な世界観のものもあるのですが)、過酷な自然とタフな人間達の物語をサラッと書いているというのが全体的な印象です。
また、250ページにも満たない本に20もの作品が収録されていることから、ほとんどの話がとても短いものとなっています。
ですのでとても読みやすく、それゆえに止め時がわからずに一気に読んでしまったという経緯があります。
在庫を確認しに行き、棚に入っているのを見るとそんなことを思い出しました。
無事に次の方にお届けすることができて喜ばしいことと、こんな面白い本がまた棚から出ていくという寂しさの間にいる複雑な心境で見送ることになりそうです。
はなひ堂ブログ 2018年1月23日