出張買取に二人で行くということ
先日ひさしぶりに妻と一緒に出張買取に行きました。
妻と行くのは娘が生まれる前に行ったのが最後でしたので実に2年半ぶりくらいで、私も彼女がキャラバンの助手席に乗っていることに落ち着かず、彼女も「出張買取の二人目って何すればいいんだっけ?」と完全にその役割を忘れている有様でした。
そもそも当店が二人で大口の買取に行くことになったのは5年前にとある法律事務所で移転に伴う1万冊弱の買取があり、さすがにそれは一人では無理だろうということでスタッフに同行してもらったのが最初でした。
それ以来、冊数がありそうな買取は二人以上で行くことにしており、最近は弟や義弟に同行してもらうことが多いのですが、去年の夏は娘に同行してもらうことさえありました(というよりもその時は誰も彼女を見てくれる人がいなかったので仕方なく連れて行っただけですが(^_^;))。
そして同行してもらう時には査定は私が行い、お客様とのやりとり(承諾書を書いてもらったり、お支払いをしたり等)も私が行っていて、もう一人はあくまでもサポートとして同行してもらっています。
出張買取に二人で行くと普段とは違った景色が見えます。
自分では気付かないことをもう一人が気付いたり、帰りの車中でダメ出ししてもらったり、それを紛らわすために無駄話をしたり等、二人で出張買取に行くメリットは数え上げればキリがありません。
そこで重要なのは繰り返しになりますが、一人がメインで査定とお客様のやりとりを行い、もう一人はあくまでもサポートとして動くことです。
二人とも査定したりお客様のやりとりも二人が交互に行ったとしたら、査定も一貫性のないものになってしまいますし、お客様も混乱するからです。
また、スタッフの教育の一環として、買取の一連の流れを学んでもらうために同行してもらうこともあります。
ですが学んでもらうために同行してもらったはずが、逆に私が学ばせてもらうこともあったりして、出張買取とは一筋縄ではいかないサービスだなと感じたこともありました。
4年くらい前のことでしたが、その時もあるスタッフに買取の流れを覚えてもらいたくて同行してもらいました。
買取の流れを覚えることは実際に査定業務に携わらなくてもその他の業務で役に立つものであり、それは例えば出張買取依頼の電話を取ったりする時に役に立つのですが、それは現場に出ずに覚えることは難しいものでもあると思います。
ですので何度か同行してもらって大体の流れを掴んでもらうのが一番の近道だろうと思って同行してもらいました。
そのスタッフは私より一回り若く、また異性であることもあってか私とは話がかみ合わないこともあったりして、もちろんそれは私に問題があることも理由としてあるわけですが、車中ではあまり居心地は良くないように見えました。
ともあれその辺は私の努力ではどうしようもなく、とはいえ時間とは過ぎ去っていくものですので(^_^;)、無事にお宅に到着しました。
お宅に着いて本を見せてもらって査定をし始めると、お客様がスタッフに話かけられているのが聞こえます。
「あなたは奥さん?」「いえ、スタッフなんですよ~」などとたわいのない話をされているのが聞こえます。
お客様は年配の女性の方で、スタッフも同性の方で安心したのか、はたまた車中で居心地が良くなかったのでその埋め合わせをしているのかわかりませんが、楽しそうに話をしています。
査定はおよそ30分くらいで終わりましたがスタッフは作業をしながらも査定中ずっと話をしていて、私はといえば本と向き合って査定に集中していることもあり、その会話に入っていくこともできず、たまに相槌を打つくらいでした。
そして査定の最中、なぜか違和感を感じていました。
スタッフはお客様と話をしながらもサポートとして動いてくれています。
そして私も査定をしており、何も問題もなさそうなのですが、ずっと違和感を感じます。
そして査定結果をお伝えし、承諾を頂いて代金をお支払いしました。
その時のお客様の反応はそっけなく、私との話が終わるなりすぐにまたスタッフと話をし始めました。
そしてその時になってやっと私は違和感の正体に気付きました。今回のサポートは彼女ではなく私なのだと。
出張買取とは不思議なサービスで、それはお品物を売買するというサービスではありますが、お品物だけを見ていればよいわけでなく、お客様その人が求めていることを見るサービスでもあります。
例えば仕事終わりの時間に対応してくれることが重要だったり、査定額よりも全てのお品物を処分してくれるかどうかのほうが重要だったり、査定の時間がかかってもいいからできるだけ査定額を高くすることが重要だったり、その逆だったりと、お客様によって様々なニーズがあります。
そして出張買取は、その限度はあるとしても、柔軟にそれらに対応できるサービスでもあります。
その中で誠実に対応していくことが重要で、通り一遍の形で対応すればいいというものではありません。
ではその誠実とは何か?その正解はお品物の中だけでは見つけられません。
今回はどうだったか?
お客様は出張買取に不安を感じ、本の知識を持った査定員よりも丁寧で正確な査定よりもその不安を取り除く説明こそが必要だったのではないか。
そしてお客様はスタッフに親しみを感じ、話しているうちに安心と信頼が生まれたのではないか。
もしもそうだったとしたら、どちらがどちらを支えなければいけないのかは明白ではないか。
本を縛り、積み込みを始めました。
買取のサポートをするということ。それは査定や取引の業務をサポートするのではなく、あくまでもお客様とのコミュニケーションをサポートすること。
査定や本の知識ももちろん大事だけれども、それらはもしかしたらお客様が重要視していない可能性もあるということ。
本を運びながら二人がさきほどまでの談笑とは違い、高らかに笑いあっているのが聞こえました。
はなひ堂ブログ 2018年2月6日