『月報』ってどんなもの?

こんにちは。スタッフYです。


お売りいただく時に付属していた方が良いもの一つとして『月報』があります。今回はそんなお話です。


1920年代後半、出版社の改造社と春陽堂が、日本で初めての文学全集を企画しました。


全集は、多い場合には数十巻にも及びますが、新刊の全集は一度でその全てを購入する訳ではなく、定期的に発行・配本されていく書籍を集めて全集全巻を揃えるシステムです。


配本の順番も、1巻から順に2巻3巻…ではなく、ランダムな配本であるようです。


これは、1から順に出してしまうと、ある程度巻数が揃ったところで購入を中断してしまう人が多くなってしまうから…という本当か嘘かわからない情報を以前に店長から教えてもらった記憶があります。


確かに。1巻2巻5巻8巻…という順で配本されたら、ちょっとソワソワしてしまいます。


とりあえず、3巻4巻6巻7巻が配本になるまで待たねば!・・・しかし恐らくはその前に10巻が出たりするのですね。上手い!(今また同じことを店長に聞いたら、「編集の進み具合とかにもよるからなんじゃない?」とまた別の回答が…なんだこいつ)


話が逸れましたので戻しますね。


定期配本される本、では次は何巻なのか?その収録内容は?…と気になるところですね。


書籍を売るためにはどうすれば効果的かということで、予約購入者獲得など宣伝戦略のひとつとして、書籍に挟み込みの小冊子『改造社文学月報』、『春陽堂月報』が作られました。


よく見るタイトルは『月報』(単に『月報』であったり『○○全集月報』であったりします)です。他には『付録』『栞』『○○季報』『○○会報』など様々です。


1928年刊行の漱石全集への月報添付を皮切りに、全集には月報をつけることが日本出版界の習わしとなりました。


では、月報の内容とは。


前述のとおり、その全集の宣伝戦略として使用されたのが始まりですので、次巻の広告掲載はもちろんのこと、研究ノート、年譜、執筆者の紹介、正誤表など。


月報掲載文を書いている作家も興味深い部分ですが、店長曰はく「月報はその作家のファンが萌えを語ってるんだ」とのことで((※)ほんとかな??(^_^;))、□□先生は△△先生のファンなのか~…とか、どういう風に評価しているのかに注目するのも面白そうです。


月報掲載の論文などから新たな知見を得ることもあるようで、石川淳が鴎外全集に掲載したエッセイは、それ自体でまとめられて一冊の本として出版されました。


他にも、月報をまとめた書籍として、横山利一全集月報集成や澁澤龍彦全集月報集成があります。


月報自体はA4もしくはB5サイズの用紙3枚ほどを二つ折りにし、2段組み程度で文章を掲載していますが、そのような僅かな掲載文から本を作るとは…。


一体どれほどの内容の深さがあるのでしょう。


日本の古本屋サイトから販売商品の一覧を覗くと、全集本体なし・月報のみで販売されている商品も多く見かけます。


私が見つけたのは、世界文学全集月報、世界美術全集月報、藤村全集月報などです。


本として出版されるまでにはいかなくても、そこには十分な価値があるのですね。



(※)の話の余談として。

同人誌即売会にサークル側として参加したことがある方は心当たりがあると思うのですが、その昔(私の最後のサークル参加は15年くらい前です(;^_^A)、サークル参加者はイベントごとに『ペーパー』というものを作る習慣がありました。

季節のご挨拶から始まって、既刊の通販情報が掲載されていたり、『すまん!新刊落ちた!!』の謝罪文があったり、近況報告があったり、自分のジャンルや新しくハマったジャンルの話等々。ライブやイベントのレポートが書かれているものもありました。

新たな知見を得るものではありませんでしたが、もしかしたら月報に近い存在なのかもしれませんね(笑)

はなひ堂ブログ 2022年4月19日