出張買取先ではたまに書画骨董と出会う。
こんにちは。
はなひ堂新井です。
「絵画なんかも買取しているのですか?」とお声がけいただくことがあります。
当店では書画骨董の類は全く買取していないのですが、なぜかお声がけいただくことが増えてきている印象です。
それは私が美術品を買取しそうな年齢に近づいているからなのか、それとも出張買取先で腕組みしながら神妙な面持ちで額縁を眺めているせいなのかはわかりませんが、とにかく買取を始めたころに比べて格段に増えてきた印象です。
5年くらい前までは骨董も買い取ってみようかと思っていくつか買い取らせていただいたこともありましたが、本と美術品の両方を探求することは難しいと感じて、いつの間にかやめてしまいました。おそらく今後も当店は買取品を増やすこともなく、私の古物商としてのキャリア(というほど大したものではない)は幸か不幸か、本だけで終わることになりそうです。今後も本に関しては、できるだけ深く潜っていけるように邁進していきたいと思います。
ですので書画骨董に関してはその価値はおろか、真贋も落款さえも見る目はないのですが、ただ古本屋でも避けることができないものがあります。それは画集や展覧会などの図録で、これがどこの誰のものなのか探っていくためには何か資料が必要となってきます。
そこで新潟県の画家については良い教材があります。それが冒頭の画像の本、「越佐書画名鑑」です。
こちらは新潟県美術商組合さんが出版された非売品の本で、どのように流通したか定かではありませんが、とにかく県内の買取では度々お目にかかる本です。高価買取できるかどうか…そのような野暮な話はここでは避けますが(できません)、とにかく江戸以降の新潟県内の画家が網羅された本で、私も何度も目を通した本になります。
マティスやルオーのような世界的な画家の図録はそうではありませんが、一般的に出張買取で出くわす画集や図録には地域性があるというのはどの古本屋も認めるところだと思います。つまり新潟県内であれば新潟県の画家が、長野県であれば長野県のそれに出会いやすい。
そんなこともあり、数年前には暇を見つけては本書を眺めていました。その成果が買取に生かされているのかどうかはわかりませんが、珍しい図録では確実に手が止まるようになった…ような気がします。
繰り返しになりますが、当店では書画骨董、道具類は一切買取しておりません。そのため、出張買取先で掛け軸や額縁を眺めているのは誰のものなのだろうかと落款をぼんやりと見ているだけという個人的なことが理由なのですが、もしかしたら越佐書画名鑑にいざなわれて気づいたら別の古物商に転生しているということもあるのかもしれません。少なくともそのくらいの力は本にあると信じています。
はなひ堂ブログ 2023年12月28日