娘と反町茂雄文集の話
こんにちは。
はなひ堂新井です。
娘が1歳になりました。
現在の発育状況はというと、だいぶ会話の雰囲気を理解できるようになって、怒られたりすると悲しそうな顔をして泣くようになったりしています。
そしてヨロヨロと歩くようになり、いろいろなものにつまずいているという状況です。
歩くようになると全ての行動を把握することは不可能で、気付けばもう目の届かない所に行き、私が今読んでいる「反町茂雄文集」(文車の会)の函を振り回したり、噛みついたりしています。
こんなことが公になれば私は全古書連を破門されてしまうわけですが(^_^;)、それは置いておくとして、この本は古本屋には面白すぎる内容となっております。
この本は「古典籍の世界」と「古書業界を語る」の二冊組の本で、文集という題名からもわかるように、主に色々な雑誌で反町茂雄が書いた文章で構成されています。
「古典籍の世界」のほうは内容的にかなり深く、出てくる書籍は普段私の取り扱う本とは毛色が違いすぎて困惑しましたが、昭和初期からの古本業界の流れと、有名な蔵書家や文庫の間に入って行うスケールの大きい仕事の数々に興奮させられっぱなしでした。
そして現在「古書業界を語る」のほうへ移ったのですが、序盤ではまさに古本屋の高利益率についても言及されており、また、そうでなければいけない理由がシンプルに書かれています。これについては私も目から鱗で、本書ではその名が「利益の二重性」と呼ばれているわけですが、これは他業種の方にも説明するにはピッタリのロジックだと膝を打っていたところです。
それを簡単に説明するために広告費に焦点を当ててみます。古本屋は基本的には仕入れの段階で広告を打ちます。「買取してます」、「本、お売りください」というような広告であり、販売よりもむしろこちらで広告費を多く使う古本屋のほうが多いかもしれません。
ただ、他業種の小売業では仕入れで広告費を使うことは稀で、仕入れよりもむしろ販売に関しての広告費を使うことが多いと思います。
ところが古本屋は仕入れの段階で広告を打つだけでなく、販売の際にも当然広告費を使うわけです。つまり仕入れ、販売のどちらにも広告費を使うために、利益は高くなければならない、利益は通常の小売りが販売の広告費をまかなうために必要なだけではなく、販売と仕入れの両方の広告費をまかなう必要がある(利益の二重性)、というわけです。
今「利益の二重性」を説明するために広告費にのみ焦点を当ててみましたが、これは広告費のみに限らないわけです。本の仕分けに関しても仕入れ、販売の二重性があり(メーカー、卸数社から大量に仕入れるという方法がとれないため)、カスタマーサービスに関しても仕入れ、販売と二重性があります。
そういったわけで、販売だけでなく仕入れ時点でも同じような管理費がかかることから、通常の小売りの利益が二重に必要という主張は、なるほどと膝を打つと同時に、体感的に感じていたことと数字が合いそうだなと納得させられたのでした。
これはもちろん「古本屋」には当てはまるが「古書店」には当てはまらないのですが、この辺の説明をしだすとキリがないので、ここで終わらせていただきます。
とにかくこの本は古本屋経営の基本事項が網羅されているような面もありながら、昭和初期からの古本業界の状況も推測できることから、本が売れないという現在の状況も昭和50年頃とさほど変わらないのかな?と身勝手な安心感も勝手に受け取らせていただきました(^_^;)。
そんなわけで本日は持ち込みいただいたお客様が2人おりました。
本をお売りいただき、ありがとうございました!
はなひ堂ブログ 2016年9月22日